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加藤 祐三、 川北 稔「アジアと欧米世界」 [読書(教養書・実用書)]


世界の歴史〈25〉アジアと欧米世界 (中公文庫)

世界の歴史〈25〉アジアと欧米世界 (中公文庫)

  • 作者: 加藤 祐三
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/03
  • メディア: 文庫



中公文庫では「世界の歴史」という全30巻のシリーズを出していて、本書は25巻目に当たる。
このシリーズでは「古代インドの文明と社会」という3巻目を以前インドに行く前に読んでいて、それもかなりおもしろかったが、この「アジアと欧米世界」も相当におもしろい本。

最近歴史の勉強をしていて感じることだが、最近の歴史の考え方は、地域ごとの政治史を語るのではなく、社会構造や生活まで視野に入れ、他地域との相互関係も見渡しながら理解しようということのようだ。
つまり、ヨーロッパでは、何という王権が何という王権に取って代わりました。ところでアジアでは何という国が何という国に滅ぼされました。ということではなく、たとえば日本史では中国や朝鮮半島の政治状況との関連で理解する、とか、政権の交代だけではなく、検地による村落等の社会構造の変化に着目するといったもの。

この本も「アジアと欧米世界」という名称からわかるように、単なる地域史を扱ったものではなく、15世紀から20世紀初頭までの約500年の、アジアと欧米の関係を俯瞰して見ようという壮大な内容。

このテーマを一言で言えば、ルネサンスが起こり、宗教改革が起こり、イスラムの圧力が高まった時期に、海洋に進出した西欧諸国が、圧倒的な軍事力を背景に、アフリカだけではなくアジア諸国も次々と植民地化していきました、ということ。
高校の世界史の教科書であればそこまでだろう。

しかし、ここには多くの疑問がわいてくる。
なぜヨーロッパ諸国はこの時期に外に、特にアジアに進出せざるを得なかったのか。アジアは進出しなかったのか。なぜ産業革命が西欧で起こったのか。
アジアが植民地化されたのはヨーロッパより遅れた社会だったからなのか。
植民地化された国、戦争で不平等条約を結ばされた国、比較的穏便に開国した国では何が違ったのか。
もちろん本書にすべての理由が示されている訳ではないが、考えていくフレームワークが与えられている。

政治的に安定し、交易システムも完成していたアジアに、ヨーロッパは複数の国が競争しつつ参入していったということになる。アジアはそのシステムでいわば自給自足していたが、ヨーロッパはそこで取引される物、香辛料、陶磁器、絹、綿製品が欲しくてたまらなかった。そして、それらの物が流入してくると、いかにそれを自身で生産するかを考える中で産業革命が起きてきた。

生活との関連に言及されているのもおもしろいところ。
今ではいかにもイギリスというイメージの砂糖入りの紅茶が象徴として語られている。
高級品だった紅茶が、酒ばかりの飲んでいた労働者階級まで含めてイギリス社会に広く普及していく。
このことは、インドで生産したアヘンで中国から購入した茶に、アフリカから連れて行った奴隷にアメリカで生産させた砂糖を入れて飲んでいると言うこと。
世界システムが拡大していくということと、ヨーロッパの消費生活が変化していくということは両輪であるということだろう。

後半で触れられている日本の開国の話も興味深い。
高校の日本史では、無能な幕府が黒船の軍事力に驚いて不平等条約を結ばされた、ということで終わりだが、そう簡単ではないというのが本書の見立て。幕府の歴史は、それを倒した明治の新政府によって意図的なバイアスがかけられているだろうことを考慮しなければならない。
実際には幕府は海外の情報を相当収集していて、ペリーが来航することも予期していた。だから黒船が来たときには浦賀にオランダ語の通訳が待ち受けていた。
それに、補給線の外を出た蒸気船が長期の交渉に耐えられないことも見抜いていたという。
交渉によって結んだ日米和親条約はそれほどまでに不平等ではないというのが本書での見方である。


「銃・病原菌・鉄」を読んだ以来の知的刺激を受けた。
とてもおすすめ。


P.S.
本棚に入れようとして整理していたら、この中公文庫の歴史シリーズ、父が遺した本の中にいっぱいあった。
親子って・・・。

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